近年、幼児期から視力に問題を抱える子供が増えています。
日本人の半数以上が成人するまでに近視になるといわれていますが、
幼児の視力低下にはある理由があり、特に注意しなければなりません。
片目の視力が著しく低下する「不同視」が多いのも特徴で、早期に治療する必要があります。
子供の視力低下の原因と対処法についてまとめました。
幼児の視力低下はどうやって起きるの?
一般的な近視と幼児の視力低下との違い
1歳~6歳までの幼児期の視力低下は、一般的な近視とは異なる過程で起こります。
一般的な近視は眼精疲労によって眼の筋肉が強張ってしまい、網膜にピントを合わせることができなくなって起こります。
つまり、多くは「眼の使い過ぎ」によって起こるのです。
それまで見えていた黒板の文字が徐々に見えなくなった・・学生時代にそんな経験をした方は多いと思います。
それに対して、幼児期の視力はもともと低い状態からスタートします。
出典:tokushima-ganka.org
生まれたばかりの赤ちゃんの目は、明暗の判別くらいしかできません。
生後1歳でやっと0.1程度になると、そこから3歳までの間に急速に発達し、0.7くらいになります。
6歳になるまでには大人と同等の視力が備わるようになり、12歳までの間で更に定着すると言われています。
この視力の発達には、日常的な眼の訓練が必要です。
といっても赤ちゃんは特別な訓練を受けるわけではなく、日常生活で様々なものを
見ることでトレーニングを繰り返し、長い時間をかけて視力を発達させているのです。
この視力の発達過程において何らかのトラブルが起こり眼のトレーニングができないと、発達がストップしてしまいます。
また、発達途中の視力は消失しやすいので逆戻りしてしまうこともあります。
つまり、幼児期の視力低下は「眼を使わないこと」で起こるといえます。
幼児期の近視と弱視
ここでもう一つ重要なのは、同じ近視でも、大人と幼児では事情が異なってくるということです。
大人の近視は「遠くは見えないが、近づけば見える状態」であるのに対し、幼児期の近視は「遠くも近くも見えにくい状態」なのです。
このまま成長するとメガネをかけても視力矯正が困難な「弱視」になってしまい、日常生活に大変な不便が生じます。
このように、幼児期の視力低下は眼のトレーニングが不足することで起こり、
発達する時期を過ぎてしまうと取り戻すことができなくなってしまいます。
そのため、3歳児健診での視力検査はとても重要です。
幼児期の視力低下の原因にはどんなものがあるの?治療法は?
幼児期の視力低下の原因は「眼のトレーニング不足」。
そのきっかけになるトラブルには次のようなものがあります。
屈折異常
遠視や乱視の程度が強い眼では、脳に鮮明な映像を送ることができず、トレーニングがうまくいかなくなります。
遠視や乱視を矯正することで眼のトレーニングを促す治療が行われます。
斜視
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片方の眼の向きがずれていると、脳には左右で異なる映像が送られることになります。
脳は情報を整理するためにずれた眼の映像を消してしまうのでトレーニングが止まってしまいます。
眼のずれ方によって「内斜視」「外斜視」などのタイプがあります。
治療法としては、ずれている方の眼を矯正することで眼のトレーニングを促す方法や、手術によって眼球のズレを治す方法などがあります。
眼の病気
乳幼児期に病気にかかり、眼のトレーニングが止まってしまうことがあります。
「先天白内障」などがあり、早期に眼の濁りを取り除く手術が必要になります。
片目の視力低下の治療法は?
上にあげたような視力低下の原因が片方の目にあると、片目の視力発達が止まった「片眼性弱視」になってしまうことがあります。
一方の眼が問題なく見えていると視力低下に気づきにくいので、小学校に上がってから判明するケースもあります。
このような片眼性弱視に有効な治療法は、「アイパッチ」と言われるものです。
良く見える方の目をアイパッチで覆い、悪い方の目のトレーニングを促して左右差を縮める治療法です。
出典:toyotasuzuki-ganka.com/
アイパッチは1日数時間の装着を数か月~数年続ける必要があり、子供にとっては大変なストレスになります。
特に学校に通う時にアイパッチを嫌がる子供は多いようです。
アイパッチによる精神的負担を取り除くには、家族や学校側の協力が必要になってきます。
アイパッチを行う際には学校側に必要性を理解し同級生にも説明してもらい、
家庭ではアイパッチが気にならなくなるような遊びを一緒にするなどの工夫をしましょう。
アイパッチによる治療は早期に行うほど効果が出やすく、治療期間も短くなります。
視力の異常に気が付いたら早めに眼科を受診するようにしましょう。
日常生活の中で現れやすい視力低下のサインとしては、次のようなものがあります。
・テレビを近寄って見ている
・目を細めている
・横目でものを見る
・顔を傾けてものを見ている
・絵本などを読むのが苦手、または集中力が続かない
こういった行動がたびたび見られたら、視力検査を受けさせるようにしましょう。
時が経てば自然に戻ることもあるの?
子供の弱視は早期に治療を行うことが重要です。
視力発達が止まったまま幼児期を過ぎてしまうと後から取り戻すのは難しくなりますので、決して見過ごすことなく治療に努めましょう。
また、視力がある程度発達してから起こる「仮性近視」の場合は、眼の筋肉をほぐすことで視力が回復する可能性が高いです。
ただこの場合も、何もせずに過ごしていても視力は回復しません。
眼の筋肉をほぐすマッサージと目を使うトレーニングを同時に行うことが必要です。
小学校高学年くらいまでは発達した視力が安定しにくく、仮性近視によって視力低下が進みやすくなるので注意が必要です。
まとめ
子供や幼児の視力低下の原因と治療法についてまとめましたが、いかがでしたか?
子供の視力低下は一般的な近視とは異なり、遠くのものも近くのものも見えない弱視を引き起こします。
早期にアイパッチやメガネで治療を行うことで視力回復効果が上がりますので、
子供の視力低下のサインを見逃すことなく適切に対処してくださいね。